研究概要 |
水混練飛灰中の重金属が不溶化するに伴いアルカリ度が低下していたことから,不溶化現象には大気中の炭酸ガスが関与するものと推測された。水混練飛灰は高アルカリ性を示し,炭酸ガスを吸収する。炭酸ガスは飛灰が保有する水に溶解し,カルシウムと反応することによってアルカリ度は低下し,反応生成物に重金属の一部は取り込まれるものと考えられる。そこで,含水率を一定に維持した湿潤飛灰を室内大気に放置した場合(以下,エイジング試験)の経時的な鉛の飛灰からの溶出濃度を分析することにした。また,カラムに充填した水混練飛灰に濃度が異なる炭酸ガスを強制通気し,鉛の不溶化の程度を把握した(以下,カラム通気試験)。 エイジング試験においては,環境庁告示13号法(以下,JLT13)による溶出濾液と湿潤飛灰の保有水について分析を行った。カラム通気試験においては,JLT13とpH依存性試験を行った。 大気放置によりアルカリ度とPb溶出量が減少した。カラム通気試験によるサンプルについて,pH依存性試験を行ったところ,実験した全pH領域で原灰と比較して不溶化が進行していた。また,カラム試験において炭酸ガス(0.3,0.03%)を通気した場合において,空気通気に比較してさらに不溶化が進行したことが分かった。X線回折分析を行ったところ大気放置などでも炭酸カルシウムの生成が認められた。以上の結果より,炭酸ガスの接触が,Pb,Cdの不溶化に最も大きく関与していることが明確になった。
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