研究概要 |
高濃度(66g/kg,6.6%)に鉛を含有する飛灰を水混練したのち,炭化処理することにより,鉛の溶出濃度は激減した。原灰の濃度930mg/Lに対して,水混錬と炭化処理によって2.1mg/L(99.8%)まで低下した6また,一連の処理に伴い大きく溶出液中の濃度が変化した成分として,カルシウム,ナトリウム,カリウム,硫酸イオン,炭酸イオン,塩化物イオが挙げられる。特に,硫酸イオンは興味深い挙動を示し,原灰の1,280mg/L,に対して,水混練飛灰は4.3mg/L(99.7%)へと激減し,その後炭化処理を行うことで1,110mg/Lへと濃度上昇が見られる。XRDの結果では,飛灰を水混練することで針状結晶物のエトリンガイト(3CaO・Al2O3・CaSO4・32H2O)が生成し,炭化処理を行うことにより二水石膏(CaSO4・2H2O),パテライト(CaCO3)が新たな主要鉱物として確認された。EPMAにより表面定量分析を行った結果,特異的な結晶物には硫黄と鉛が同じ部位に高濃度で定量された。 一連の研究を通して,重金属不溶化の機構として,次のシナリが考えられた。つまり,塩化鉛の形態で存在していた鉛は,飛灰を水混練することによって高アルカリ性のもとで溶解し,炭酸イオンや高濃度の硫酸イオンやと反応し不溶化する。この過程において,鉛を含有したエトリンガイトやカルサイトが生成し,鉛がマトリックスの中に取り込まれる。さらに,炭化処理を行うことにより,エトリンガイトは二水石膏やパテライトへと分解されるが,鉛は硫酸イオンや炭酸イオンと結合しているため依然と難溶解性であり,炭酸ガスの吹き込みとそれに伴うpHの低下により,PbSO_4の一部はPbSO_4よりも溶解度が小さいPbCO_3へと変化し,一層,鉛は難溶解性となることが考えられた。
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