研究概要 |
非イオン性XAD8樹脂,陽イオン交換樹脂,陰イオン交換樹脂を用いて,湖沼河川水中の溶存有機物を,溶存有機炭素(DOC)をパラメータとして,疎水性酸(フミン物質),疎水性塩基,疎水性中性物質,親水性酸,親水性塩基,親水性中性物質の6つに分画する手法(DOC分画手法)を確立した。この手法を琵琶湖,霞ヶ浦および流入河川水等に適用し,湖水および河川水溶存有機物の特性や起源について検討した。 湖水と河川水,および流域特性の異なる河川水ではDOC分画分布および紫外部吸光度(UV):DOC比に有意な違いが認められた。各分画成分の存在分布を把握した。湖水および流入河川水ともに,DOC成分として有機酸(フミン物質+親水性酸)が卓説していた(>65%)。湖水では親水性酸が,河川水ではフミン物質が優占した。特に,森林自然河川水でフミン物質の存在比が極めて高かった。湖水のUV:DOC比は,親水性酸,湖水DOC,フミン物質の順に増大する傾向を示した。河川水の場合,河川水DOCのUV:DOC比は湖水のそれよりも著しく高い値を呈し,土壌由来DOCの影響が大きいと推察された。しかしながら,分離された河川水フミン物質のUV:DOC比は既報の河川水フミン物質の値としてはかなり低く,湖水フミン物質のUV:DOC比よりも顕著に高いものではなかった。特に都市系河川水中のフミン物質のUV:DOC比は湖水フミン物質よりも低かった。 湖水および河川水,各分画成分のトリハロメタン生成能を評価する手法を確立した。微量のサンプルに対応するために次亜塩素酸処理プロセスをできる限りスケールダウンし,多量のサンプルに対応するためにヘッドスペースオートサンプラーGC/MSによりトリハロメタン生成能を測定を開始した。
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