研究概要 |
昨年度開発した溶存有機炭素(DOC)分画手法を.再現性向上のために,サンプルDOCを疎水性酸(フミン物質)、疎水性中性物質.親水性酸,塩基,親水性中性物質の5つに分画する手法にバージョン・アップした。この手法を霞ヶ浦湖水,流入河川水および霞ヶ浦流域のDOC源に適用し,溶存有機物の特性や起源について検討した。また.霞ヶ浦湖水については,ろ過サンプル、フミン物質,親水性画分(親水性酸+塩基+親水性中性物質)を1mgCL^<-1>に調整し,トリハロメタン生成能をヘッドスペースGC/MSで測定した。 霞ヶ浦湖水、流入河川水,森林渓流水、畑地浸透水、田面流入水,田面流出水,生活雑排水、下水処理水、ヨシ・ガマの繁茂する池水,藍藻類培養後の培地ろ過水を分画した。全てのサンプルで有機酸画分(フミン物質+親水性酸)が優占していたが,フミン物質と親水性酸の存在比はサンプル起源により顕著に異なった。土壌との接触が顕著な森林渓流水や畑地浸透水ではフミン物質が圧倒的に優占した。河川水ではフミン物質と親水性が同程度存在したが、湖水では親水性酸の存在比が上回った。生活雑排水,下水処理水および池水で親水性酸が優占し、藻類培養液では親水性酸が顕著に優占した。生活雑排水では疎水性物質の存在比が大きく,藻類培養液では親水性中性物質が著しく高かった。疎水性中性物質は生活雑排水中のLAS等の洗剤,親水性中性物質は藻類代謝物の糖類物質と考えられる。 霞ヶ浦ろ過湖水、フミン物質、親水性画分の平均トリハロメタン生成能は、それぞれ28.4,26.9,31.4μgトリハロメタンmgC^<-1>であった。親水性画分のトリハロメタン生成能はフミン物質のそれよりも有意に大きがった。親水性画分のDOC濃度はフミン物質より約2倍高い。従って,親水性画分はトリハロメタン前駆物質としてフミン物質よりも重要と結論される。この結果は既存学説を覆す新しい発見と言える。
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