研究概要 |
霞ヶ浦湖水(6地点)および流入河川水(主要5河川)中の溶存有機物を,フミン物質分離に基づく,疎水性-親水性,酸性-塩基性の違いによってフミン物質,疎水性中性物質,親水性酸,塩基,親水性中性物質の5つに分画した。引き続いて,ろ過サンプル,フミン物質,親水性画分(親水性酸+塩基+親水性中性物質)を1mgC L^<-1>に調整し,トリハロメタン生成能(THMFP)をヘッドスペースGC/MSで測定した。前年度はTHMFPをμgTHM・mgC^<-1>として測定した。この単位系は水質基準として重要なものであるが,トリハロメタン生成能を科学的に評価する場合に問題があるため,THMの単位をμgTHMからμmoleTHMに変更した。また,フィールドでの存在濃度を考慮するためにTHMFPに溶存有機物濃度(DOC)を乗じたμmoleTHM L^<-1>としてTHMFPを評価した。 霞ヶ浦湖水における親水性画分のTHMFPはフミン物質のそれよりも明白に大きかった。従って,親水性画分はトリハロメタン前駆物質としてフミン物質よりも重要であると明白に結論された。河川水では,親水性画分とフミン物質のTHMFPはほぼ同程度の値を示した。従って,河川水では,既存学説通りに,フミン物質も代表的なトリハロメタン前駆物質と言える。しかしながら,湖水の場合には,明らかに親水性画分のほうが重要なトリハロメタン前駆物質であると結論される。この発見は湖水を水道水源とする場合の浄水処理場の在り方に一石を投じるものと言える。
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