1.実験目的 現設計法における開口壁の設計法は、開口の大きさに従いそのせん断強度を低減させる方法を用いている。この方法は簡便であるが、実際の力の流れを反映させているとはいえず、開口周囲の補強筋の配筋も終局強度の観点からは合理的に定まらないなどの問題点も多い。特に、せん断破壊壁の1層耐震壁の実験結果との対応は悪くないが、曲げ降伏する連層耐震壁の靱性設計に適用するとなると大きな疑問が残る。筆者らは既に、開口壁を開口左右の袖壁付柱と開口上下の垂壁・腰壁付梁の各耐震要素に分離してそれぞれを設計する、という新たな連層有開口耐震壁の耐震設計法の考え方を提案している。本研究ではこの有開口壁をいくつかの耐震要素に分離して靱性設計する方法の妥当性を実験的に評価することを目的としている。 2.実験概要 中央開口で、開口周比が0.4と0.5の2体の中央開口試験体を用いて連層耐震壁の実験を行った。具体的には、連層有開口耐震壁の下部2層を対象とした試験体を用いて頂部1点加力による静加力実験である。崩壊形は1階脚部の曲げ崩壊形とし、そのときに各耐震要素に生じる応力に対してせん断強度と曲げ強度を確保という方針で試験体を設計した。0.5の開口試験体では、袖壁のせん断補強筋として斜め筋を配した。 3.結論 実験を行った結果、以下の結論を得た。 (1)2.で述べた試験体の設計法で意図したとおり、試験体はいずれも壁脚部全体曲げ降伏の挙動となった。また、最大耐力の80%に低下した点で評価された変形能の限界値を実験的に得ることができた。 (2)実験より得られた変形能の限界値を1.で示した提案の評価法で検討してみると、実験値より大きくなった。これは設計として安全側であるが、より精度のよい方法を考える必要がある。
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