研究概要 |
本研究は,中低層鋼構造建築物の構造設計において,地震荷重のような常温環境の荷重に対する設計と火災に対する設計とが全く別に行われている現状から,これらを統合しかつ信頼性理論に基づく設計システムを開発することを目的としている。研究の初年度としては,これらの設計に必要なデータを収集し整理すること,および信頼性解析のためのソフトウェア開発にあたってのフレームワーク作成を行った。 こられの研究を実施する過程で,信頼性設計のためには目標設計信頼度を定める必要があるが,建物内居住者の安全性の観点から,地震に対する信頼度と火災に対する信頼度を同一の値に設定すべきか,地震時には構造躯体の挙動のみならず非構造部材や家具等の挙動も重要ではないか等の問題点が明らかになった。したがって,前述の作業と並行して,目標設計信頼度の設定値に関して総費用最小化の観点から考察を進めるとともに,建築物に関連したリスクに対して居住者である一般大衆がどのような選択行動を採るかに関して調査する枠組を作った。この枠組とは,インターネットのホームページを使ってアンケートを実施するというものである。また,地震時において非構造部材・家具等の構造躯体以外のものが人命に与える影響を,実際に建つ中層鋼構造建築物の緒元を用いた弾塑性応答解析により定量的に把握した。 今後収集した種々の資料を分析整理するとともに,当初の予定にはなかったものの今年度着手した新たな展開をも踏まえて,次年度には先ず中低層鋼構造建築物の統合的信頼設計に向けて各部材・要素の設計についてケーススタディを重ね,これらの成果を構造物全体の設計に展開する。
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