高層鉄筋コンクリート造(R/C造)建築物の実態を資料調査し、各構成部材の弾塑性特性に基づいて架構の特性を定める弾塑性地震応答解析を行い、本研究課題で対象とする靭性型のR/C造建物の地震時応答特性に検討を加えた。本年度の研究実施項目ならびに成果の概要は以下の点にまとめられる。 1.1995年兵庫県南部地震の際に神戸市内強神域において得られた強震地動記録の収集を行い、それらの動特性の解析を行った。以下の記録を収集し、データベース拡充を図った:(1)六甲アイランド内の高層共同住宅内記録;(2)JR鷹取駅構内記録。 2.本課題で取りあげた靭性型R/C造建物の耐震設計上の課題事項は、靭性に耐震性を期待することにより、建物骨組に計画される架構強度は最小限大きさであり、地動が多方向より加えられる場合に、多方向面内に於いて降状機構が構成されることである。収集したデータに基づき、地上30階建物の検討モデルを作成し、弾塑性応答による数値解析により、2方向地震入力に対して励起される曲げおよび変動軸力に対して柱部材に確保する強度を検討した。得られた結論は、以下にまとめられる。 (1)周期の短い建物ほど2方向入力の影響を大きく受け、柱部材の強度確保に必要な2方向係数は大きい。 (2)2方向係数は建物骨組強度により変動し、骨組強度を大きく計画すれば2方向係数は小さくなる。 (3)1成分を斜め入力する考えは、架構の構造特性、入力地震動特性によっては危険側の小さめの係数を算定するが、概ね妥当な2方向係数を算定する簡便な考え方として評価される。 3.モデル建物の検討により、建物の両方向架構の周期特性(剛性)が異なる場合に、2方向係数に不安定な領域があることが解析された。次年度は、方向によって構造特性が異なる架構より計画される建物の靭性依存型設計について解析的な検討を継続することを課題にとりあげる。
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