耐震性を骨組架構の靭性に依存して計画される鉄筋コンクリート造建物の耐震設計上の課題について、解析モデルに設定し、弾塑性地震応答解析により定量的な検討を加えた。 近年、高強度材料の開発によって高層の鉄筋コンクリート造建物の計画が可能となってきた。これらの建物では、想定される大地震時に骨組架構に降伏ヒンジ形成を許容し、ヒンジ部位のエネルギー消費によって耐震安全性が確保されるよう計画される。この耐震構造計画では、想定される大地震に対し過大な応答を生じさせない大きさの骨組強度を確保するとともに、計画するヒンジ部に必要な靭性を確保する。この計画では、架構に確保する骨組架構はヒンジ形成を許容する程度の大きさであるため、本来空間中で多次元の運動成分を有する地震動入力に対し、架構の両方向において降伏機構を形成することとなる。 本研究は、この点を問題点として取りあげ、靭性型骨組架構が多次元地動を受けた場合の柱部材の2方向曲げ、柱、特に隅柱に生じる2方向よりの軸力変動の重畳を問題点として取りあげ、ヒンジ形成を認めない柱部材に必要な設計強度の2方向割り増し係数を弾塑性地震応答解析より評価する。地動は、本来は立体空間中での6自由度成分を有するが、本研究では、成分が評価でき、また建物応答に及ぼす影響が大きいと判断される水平面内2並進成分により算定し、地震動に定められる主軸成分により評価した。 検討対象とする建物には、60層の高層R/C造建物を、実設計例を参照してモデル化した。想定される大地震時に、骨組架構によって大きなエネルギー消費が期待できるはり降伏先行の降伏機構を確保するに必要な柱部材の強度を、2方向曲げと2方向よりの軸力変動による割り増し係数をそれぞれに2方向係数として評価し、構造特性、地震動特性を解析パラメータとして定量的な評価を行った。
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