研究概要 |
本年度の研究としては,傾斜地盤中の杭基礎が極限状態に至るまでの理論を構築すること,そして実験では杭頭自由の単杭を対象とした模型実験を行うことを計画し実行した。理論として,(1)傾斜地盤内応力の三次元的伝播による相互作用に対しMindlinの第1解および第2解を傾斜地盤に対応して座標変換し積分変換した変位影響係数を与え,(2)杭周辺地盤の進行性破壊の現象には地表面近傍の斜め上方へ滑り破壊する塑性域Iと土被り圧の大きい深い位置の杭体側方部から後方部へ滑り破壊する塑性域IIを考慮した解析モデルを与え,そして(3)杭体には線形状態から非線形そして全塑性状態に至る解析モデルを与えた解析法を構築し,プログラム化を行った。一方,実験としては,既に所有していた「地盤移動型水平載荷装置」を傾斜地盤用に改良し,杭頭自由の単杭(杭径=2.0cm,肉圧=0.1cmのアルミニウム管製模型杭)について,地盤の傾斜角θをパラメータ(加力方向に対して時計方向を正)として,θ=-32°,-17°,0°,+17°,+32°の計5種類の実験を実施した。 これらの研究を通じて得られた知見は,以下の通りである。 1)地盤の傾斜角θがプラスに増加すると杭-地盤系の水平抵抗剛性は低下し,反対にマイナス側に大きくなると抵抗剛性は増大する。 2)実験における杭-地盤系の終局状態を地中部の最大曲げモーメントが全塑性曲げモーメントの97%(全てのストレンゲージが生存している状態)と仮定すれば,終局時の水平抵抗力はθがマイナス側よりプラス側の方が小さくなるが,終局状態に至る杭頭水平変位量は逆に大きくなる。 3)構築した解析法と実験結果との比較において,弾性範囲では良好な一致を示し,杭および地盤の塑性化が進行するにつれ若干の差異が生じるが,全体的に提案する解析法は実験結果の応答性状をよく説明できる。
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