本年度は、幅厚比28〜117の正方形角形鋼管により横補強された鉄筋コンクリート柱(せん断スパン比2.0)13体の一定軸力下における繰返し曲げせん断実験を行った。本年度の実験結果と平成9年度に行った10体の試験体に関する実験結果を総合して、鋼管横補強柱の耐震性能につき以下の結論を得た。 1. 曲げ耐力に付いては、コンファイドコンクリートの応力・ひずみ関係に関する崎野・孫モデルをもとに提案されている曲げ圧縮側コンクリートの応力分布に関する形状係数および限界ひずみを用いた曲げ耐力略算法により精度よく算定できる。 2. せん断力を受け曲げモーメント勾配がある柱の曲げ耐力については、危険断面である材端が加力スタッブ等の拘束により耐力が上昇するため、危険断面が柱内部にシフトする現象の影響を考慮に入れるために提案した曲げ耐力上昇率を用いれば良い。 3. せん断耐力については、鉄筋コンクリート柱のせん断耐力算定式を準用することを検討した。鉄筋コンクリート柱のせん断耐力式については、実験式や半理論式が多数提案されているが、それらのうち、7つの式について検討した。その結果、実験式としては修正大野・荒川式の適用性が良く、半理論式としては日本建築学会の「鉄筋コンクリート造建物の靱性保証型耐震設計指針」におけるせん断耐力式A法による算定式の適用性が良いことを明らかにした。いずれの式も十分な精度で鋼管横補強柱のせん断耐力を予測でき、設計式として用い得るという結論を得た。 4. 復元力特性の包絡線で評価した耐力が、最大耐力の95%に低下した時の部材角で評価した柱の変形能力は、鋼管幅厚比、材料強度、軸力比の関数として表すことが出来る。これにより、所定の変形能力を柱に与えるために必要な鋼管の最小板厚を決定することが可能となった。
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