| 研究概要 |
本研究の目的は、強い軸力下で水平力とねじりモーメントを繰返して受ける閉断面鋼柱に、構面外への累積塑性変形が発散的に生じて崩壊に至る挙動を、実験と精密な数値解析によって調べることである。まず、水平力による柱頭変位とねじりモーメントの相乗効果が生み出す構面外への小さな力(横荷重)が、この発散挙動の原因であることを数値解析によって確認するとともに、この結果を受けて、下端固定上端ピンの柱に強い軸力と小さな横荷重のもとで繰返し水平力を載荷できる実験装置を設計製作し、予備実験用の供試体2体を用いて本装置によって当初の目的に沿った精度の高い実験が可能であることを確認した。
続いて、板厚の異なる2種類の円形鋼管柱計6体を用いて、これらの供試体が初期降伏水平力の0.1倍という小さな水平横荷重と、それぞれ初期降伏軸力の0,0.3,0.4および0.5倍の軸力の下で繰返し水平力を受けるときの挙動を詳細に調べた。結果として、いずれの供試体にも大きな構面外(横荷重方向)変位が発散的に累積する現象が生じ、数値解析結果とかなりの精度で一致することが確認された。実験でのこの発散挙動の確認は、本研究によって初めて達成されたものである。また、この発散現象の原因については、降伏断面において、断面力で表示した降伏曲面の形状が荷重の繰返しにともなって変化し、一般化塑性ひずみ増分ベクトルの構面外方向への成分が次第に大きくなるためではないかと考えられるが、現時点では推論の域を出ない。今後、降伏断面における降伏曲面の繰返し荷重の下での形状変化について明らかにしていきたい。
|
