曲げ破壊を起こすRC部材は、単調載荷時には靱性に富む場合でも、曲げ降伏後の繰り返し載荷を受けることにより、著しく変形能力が低下することが知られている。著者らは、曲げ降伏後の繰り返し載荷によりせん断変形成分を徐々に増加し破壊に至る梁部材の耐力低下挙動を考察することにより、従来の強度破壊型のメカニズム(せん断破壊)とは異なる、繰り返し載荷時に特有の破壊モードが存在することを主張してきた。 この破壊モードは、曲げ降伏後の繰り返し載荷によりヒンジ領域に横方向歪みが徐々に蓄積し、これが原因で引き起こされるものであることが実験より推察されている。本研究では、この横方向歪の蓄積挙動が引き起こされるメカニズムを解明する目的でRC梁部材の繰り返し載荷実験および、これと平行する形で、ヒンジ領域をシンプルな形にモデル化した歪み蓄積挙動解析を行った。この結果、次の成果が得られた。 ・固体内に左右の剛性のアンバランスが存在すると、繰り返しにより横方向歪み蓄積が発生する。 ・横方向歪みの蓄積は1サイクル目がもっとも大きく、それ以降小さくなり、一定値に収束する。 ・横方向歪みの増加により固体に剛性低下が生じると仮定すると、この剛性低下の急激さの違いによって、歪み蓄積が収束する場合と発散する場合の2通りが起こる。 ・発散条件は強度を含まない形で剛性低下の度合いを表す係数を用いて定式化する事が可能である。 ・解析から得られた収束発散挙動はRC梁部材のヒンジ領域における横方向歪みの増加挙動と定性的に一致する点が多い。
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