パッシブ換気部材である「息をする建築部材」は、微細孔を通じて空気や湿気をバランスよく透過させて室内気候を整えることが主な働きであり、外気温・湿度、日射、風圧などの外気の気象条件の変化によって部材における透気、調湿、断熱性能が変化する。 平成9年度は、その外気象要素の中でも、特に部材に掛かる差圧が「息をする建築部材」における透気性能、調湿・断熱性能にも大きな影響を与えることに着目し、まず、これまで明らかにした「息をする建築部材」を天井に適用した場合に加え、「息をする建築部材」を勾配屋根へ適用した場合を想定した換気回数予測計算を行い、部材における必要相当開口面積の算出を行った。また、微細孔あきアルミシートを試作し、シートにおける透気実験を行い、既存の1次元の熱・空気湿気同時移動計算モデルへ組み込むためのシートの相当開口面積の実験モデル化を行った後、その設定値を基に温暖湿潤地域を対象とした「息をする建築部材」を実験試作し、環境制御室内におけるチャンバ実験を行い、一定差圧時における「息をする建築部材」の熱・空気・湿気同時移動の特性についての1次元的な検討を行った。 これらを受けて今年度は、環境制御室内でモデル化された非定常状態における実物大実験を行い、主な外界気象要素である風圧、気温、湿度等の各気象要素の非定常変化に対する「息をする建築部材」内部の熱・空気・湿気の2次元的な挙動メカニズムを明らかにする。さらに、ここで得られた知見を基に、実験家屋を用いた屋外での実験を行い、自然条件下、すなわち非定常状態における「息をする建築部材」の自然換気・熱回収・調湿性能の有効性を確認する。併せて、自然風条件下で変化する自然換気量、さらにそのときに形成される室内気候を明らかにする。
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