本研究では、「面換気」性能を有する建築部材(「息をする建築部材」)を用い、自然条件下で有効に働くパッシブ換気システムを構築することを目的とし、「息をする建築部材」の部材内部における非定常的な熱・空気・湿気挙動を把することにより、部材の自然換気・断熱・透湿性能への影響を明らかにした。 本研究で得られた具体的な成果を以下に示す。 1. 統計的な換気設計による部材の試作と定常状態における透気・断熱・透湿性能の有効性の確認 統計的手法による換気設計を行い、定常状態において基本的な透気・断熱・透湿性能を満たす「息をする建築部材」を試作し、一定差圧条件下での実験を行うことにより、定常状態において必要な基本性能が実際に得られていることを明らかにした。 2. 部材内部及び表面近傍での空気挙動と透気特性に影響を与える非定常的な要素の抽出 非定常状態における部材内部及びシート表面の空気挙動を定性的に把握し、部材の透気・断熱・透湿性能に影響を及ぼす非定常的なパラメーターを抽出するために、レーザーを光源とした可視化実験を行い、数十秒程度の周期性を持つ圧力変動条件でも、有効な換気性能を持つことを定性的に確認した。 3. 風圧変動が部材内部の熱・湿気挙動に与える影響 高さ2mの実物大試験体を環境制御室内に設置し、内部結露発生の条件として最も厳しいと考えられる外気条件下における実物大実験を行い、風圧変動時、高い熱回収効果が得られることや急激な空気流出時の一時的な結露の危険性が、透気方向が変化することにより解消されることを定量的に示した。
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