本研究は、冷暖房廃熱などの季節的に発生する未利用エネルギーや再生可能な自然エネルギーを有効に利用する可能性を検討し、エネルギーシステムの最適化に対する一つの方策を提案することを目的としている。 本年度はまず、集合住宅を含む複合施設に対する冷暖房・給湯負荷の検討に基づいて、従来型の地域冷暖房システムを適用した場合の年間エネルギー性能評価を行うとともに、評価ツールの開発を行った。そこでは、短期の熱回収システムおよびコージェネレーションシステムの適用可能性について検討行った。また、医療施設についても同様の検討を行い、未利用エネルギーの1つである井水保有熱を活用したシステムについて評価し、それぞれの有用性を確認した。 また、シミュレーションプログラムの1つであるTRANSYSを用いて、冬期における太陽熱利用システムの検討を行ない、その性能評価手法を得た。これと平行して床暖房システムのシミュレーションプログラムの開発を行ったが、現時点ではこれらの両評価はそれぞれ独立しており、両者を連携・統合した検討については、来年度以降に実施する予定である。 一方、本研究の主要なテーマの1つである季節間(長期)蓄熱槽利用システムについては、運用開始時からの非定常期間における蓄熱性能、同期間における性能を維持するために要求される付加的な運転・制御の必要性などについてシミュレーションによる検討を行い、季節間蓄熱槽の適用可能性についての知見を得た。また、季節間蓄熱システムの1つと考えられる、床下ピットを用いた長期放・採熱システム(ア-スチューブ)による外気導入負荷の低減についても、実測とシミュレーションによる検討を行い、外気負荷の低減を確認した。これらの季節間蓄熱システムを、上に述べた地域規模の複合施設などへ適用した場合の性能評価については、来年度以降に実施する予定である。
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