市町村住宅マスタープラン策定の基礎として、政策検討対象としての「住宅市場」圏域構成を確かめ、その中で各市町村を位置づけ、これらを踏まえて各市町村の住宅需要構造と住宅事情の地域面・階層面にわたる構造的解析と将来見通しの客観的な把握が必要である。今年度の研究目的は、昨年度実施した1995年国勢調査の分析に引き続き、1985・90年次の全国全市町村へ範囲を広げ、住宅市場圏域変化動向とその地方性解析を行い、さらに圏域内構造(圏域帯)分析によりそれに属する市町村の住宅事情の位置づけとその変化過程の詳細を分析することにある。最後に、これまでの研究の総合考察を行っている。 明らかになった主要点 : 1)本研究では、住宅立地の基本要因である職住関係に着目して、母都市への通勤流出率を基本指標とした住宅市場圏を設定した。2)住宅市場圏はより複雑化・外延化の傾向にあり、大規模圏域の周辺の小規模圏域がそれらに組み込まれ、全体として市場圏数(1995年で606)は減少する方向にある。3)住宅市場圏の地方特性は、人口等の圏域規模の違いを基盤に、各圏域全体の住宅事情の都市化およびその変化などの度合いを反映している。4)これらの住宅市場圏の内部構造を圏域帯別で見ることによって、各圏域帯に属する市町村の住宅事情の特性や役割が明確になる。5)住宅市場圏の中心都市(主核)は就業地としての性格を強め、周辺圏域帯は居住地としての圏域拡大傾向が見られ、より大規模な市場圏ではその中で多層の副次核の形成が進み、圏域構造が複雑化している。6)一般に、中心に近い圏域帯で住宅の中高層化や民営借家の増大が進み、外周部では戸建持家が主要な住宅タイプとなり、市場圏内での地域的な役割分担が見られる。しかし、以前に比べると、副次核の形成などにより中間的圏域帯でも前者の住宅事情の都市化現象が進む。
|