医療の発展に伴ない病院には常に成長と変化が求められ、その対応を目的とした増改築等のリニューアルはかねてからの病院建築計画の主要な課題であった。本研究の目的は、第1にリニューアルヒストリーモデルを作成して、各段階における計画課題を明らかにすること、第2には今日、病院建築の典型となっている2つのブロックプランタイプ-集約型・分棟型におけるリニューアル計画手法を整理して、それぞれの特質を計画指針として提示することにある。 本年度は、現代の病院計画論をもとにほぼ昭和50年代に建築された17の病院を対称に、病院を直接訪問して、リニューアルの経過を医療法第7条に規定されている「病院開設許可事項の変更」申請に基づき図面上で確認しながら担当者から聞きとる方法によった。次年度に同様の調査を約35病院について実施して合わせて詳細な分析を行うが、本年度の調査においては、小規模な増改築を極めて頻度高く繰りかえした後、築後15〜20年にかけて大規模な増改築を、そして25年過ぎると全面建替えを行ったり検討の段階にある実態が捉えられた。また、竣工当時に将来の増築を建物上部に予定していたケースでは、その後の新耐震基準の改定や阪神淡路大震災の経験を踏まえて、それを断念せざるを得ない事例も多く見受けられた。さらに、集約型の事例では、いずれも築後15年前後におとずれる設備配管の更新を、病院機能の維持とりわけ入院患者の在室したまま行うことの困難に直面しており、一方、当初から将来の増改築に対応することで開発された分棟型・多翼型の事例では、本年度1例だけの調査で明確ではないが、増改築の容易さが十分確認できた反面、病院各部が離れすぎて患者動線が不都合を生じているなど、リニューアルに関わる問題の所在を具体的に把握することができた。
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