近年建築に関する修理報告書として、初期の近代建築の集中している横浜、神戸、長崎に関するものについて、手に入る限りのもののほとんどを収集した。 日本近代建築総覧等の資料から、全国の解体修理、解体移築の行われた近代建築を各県ごとにリストアップし、木造139件、煉瓦造5件、鉄筋コンクリート造5件、その他22件を得た。これらのうち入手可能な修理報告書を収集した。 収集した修理報告書について、その内容を、建築概要、工事の概要、修理内容等の項目に分け整理した。建築概要として、所在地、敷地、建物面積、階数、構造を、工事概要として、修理方法、工事期間、設計管理者、施工業者を、修理内容として、部位別・工事種別の工事内容の詳細を、個々の部材についての記述ができるだけ含まれるような形で報告書から拾い出し建物別にデータベース化した。 また、日本近代建築総覧発行後、取り壊された建築物をアンケートによって各県ごとに調査し、解体時期、解体された理由、保存運動の有無、建物の記録の有無、記録の内容など、その実状を把握した。 以上のデータを基に、移築・解体修理ではその建築物を構成している部材一つ一つの取扱いが重要となるため、部材の記号化を行い修理行為の流れを明らかにした。さらに、修理行為を保存方法別にいくつかの作業過程に分割し、その各作業の共通構成要素を抽出し、作業過程と作業構成要素のマトリックスをつくり保存のための修理が的確に行える講法を検討することができる枠組みづくりを行った。
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