本研究で実施した調査による実態把握から、明らかにした点を列記する。 ・入所者属性と活動内容の乖離:入所更生施設16施設の約6割が重度・最重度判定者であり、高齢化の傾向を加味すると、通過施設の建前およびそのための訓練とその結果としての更生という本来の施設設立主旨は形骸化しているといえる。 ・居住環境改善の遅延:生活集団の構成は、大規模集団構成のままであり、老朽化に伴う施設更改において、旧来の面積基準解消程度に止まっている。概して、居住水準向上の取組には到達していない。 ・施設利用の滞留化:施設退所の促進と入所者定員の削減、その過渡的形態あるいは現実化の方策といえる施設機能の改変は進んでおらず、入所施設定員はむしろ増加の傾向にある。地域生活促進のため、GHの積極的設置や生活支援センターの設置が図られているが、その拠点的施設である通勤寮入寮者は、ことに近年養護学校卒業生で占められ、同一法人の併設といえども、これらの施策による既存入所施設から地域生活への移行が功を奏しているとは言いがたいのが現状である。 以上を踏まえて、これからの入所型施設再編成を展望することを念頭においた施設活動および居住形態実現のための施設計画理念の創出、これと並行して、地域生活実現のための入所施設の新たな機能設定・変革像の提示が、立地条件などを含めた施設特性を考慮した上で見出されなければならないといえ、これが次段階の課題である。
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