本研究では、主に以下のことを明らかにした。 (1)ホールの形状や座席配置を表す要因を抽出し、国内外の36ホールについて、クラスター分析を行ない、典型的な7タイプに類型化した。 (2)心理量分析を行い、アリーナ型では、ホール全体として視覚面の様々な心理評価において優れていることや、さらにオケとの関係や、鑑賞する雰囲気においても、満足できる座席ブロックを有するなどの特徴を明らかにした。 (3)心理評価と4指標の相関関係から、視覚的総合評価がかなり良いのは、距離15m以内で俯角0〜5度の範囲内と、距離12〜28mかつ俯角5〜15度でふれ角85度を越えない範囲である。また座席方向は、ずれ角が25度以上で不適切と感じるといった、ホールの設計や評価に対する指針を数値として示した。 (4)(3)で得られた指針を踏まえ、様々な心理評価の良い評価や悪い評価の範囲にある座席数を明らかにし、座席配置による調査対象の各ホールの特徴を明らかにした。 (5)コンピュータグラフィックスを用いて座席における視空間を表現し、人によって欠けるステージ面積の割合(人欠損)は20%・40%、バルコニー・手摺など物によって欠けるステージ面積の割合(物的欠損)は20%が境になり、それらの値以上になると各々が気になる程度が増すことなどを明らかにした。さらに、概ねステージ面の見える面積が大きいと、視覚的総合評価が良くなることや、欠損が40%を超えると視覚的総合評価が下がること等が判明した。 (6)重回帰分析を行い、距離・俯角・ふれ角・ずれ角・人欠損・物的欠損の6変数で、視覚的総合評価の予測式を得た。それによって欠損も含めた様々な座席における視覚的総合評価の予測が可能となった。 (7)(6)の予測式を踏まえ、ホール全体として欠損による視覚的総合評価の低減が大きいホールなど、調査対象とした各ホールの欠損による視覚的総合評価の低減について具体的に示した。
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