高齢化社会への対応のひとつとして、住宅に椅子式階段昇降機を設置する例が徐々に見られるようになってきた。本研究は、わが国のごく一般的な住宅にこの昇降機を導入する場合に、昇降機使用者および介助する立場の健常者の両者にとって、階段回りの移動行為に支障をきたさないための必要最小限の平面寸法を求めようとしたものである。このねらいに対し、最もクリティカルな問題となるのは、昇降機の設置された階段を健常者が支障なく昇降できるかという問題と、階段上下のスペースにおいて昇降機使用者が車椅子との間を支障なく移乗できるかという問題であると考え、このふたつを研究の対象とした。研究の結果、まず前者については、昇降機の椅子を閉じた状態で健常者が昇降するという条件であれば76cm以上の階段幅で設置が可能であるが、椅子が開いた状態あるいは椅子に人が乗った状態で健常者が昇降するという条件においては、通常の在宅内階段として考えられる現実的な幅寸法の範囲では無理であることが分かった。また、後者については、介助者が昇降機使用者に対しこの機器と車椅子との間を支障なく移乗させることのできる必要最小限の正方形スペースという条件で平面寸法を求めたところ、一般的な昇降機の場合に椅子の停止位置が階段上下で若干異なることを反映して、階段上の移乗スペースにおいては100〜130cm角程度のスペースが、また階段下の移乗スペースにおいては120〜130cm角程度のスペースが必要であることが分かった。
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