研究概要 |
高齢心身障害者の自律度と社会参加度が,障害特性や居住環境構成の相違によってどのように変化するかをメインテーマに研究を進めた.3年間継続して調査した特別養護老人ホームの建替え工事に伴う環境変化による生活行動の変容状況については,建替え工事が完成したので,例年通りの調査を実施し,最終のまとめをした.自律度と社会参加度は歩行能力と痴呆程度が大きく関わるが,居住環境も車いす使用者が移動しやすい環境になると,それぞれの程度は高まる.さらに交流の場やトイレの配置,個室か多人数室か,居室のグループ化などの条件によっても変化する.とくに,喫煙者たちは喫煙室が相当遠くても,そこまで移動して喫煙しており,目的意識があれば,歩行困難者であっても移動されていた.遠い喫煙室がいいとは言わないが,多様な目的意識を醸成する環境づくりの必要性が認められた.新たに,在日韓国・朝鮮人向け特別養護老人ホームの調査機会が得られたので,これについても同様の手法で調査(対象者80名)し,これまでの成果と比較検討した.自律度はほぼ同程度であったが,社会参加度は在日韓国・朝鮮人のほうが非常に高く,民族的な団結の強さがみられた.そこで,食堂における座席選択の実態を観察調査し,格子型分布図を作成して,グループ化の類同性を検討した.類同性は,性別,同室者別,痴呆程度別,歩行能力別でみられ,年齢別,入所期間別,言語能力別,交際範囲別,民族意識別ではみられなかった.また,これまでの特別養護老人ホーム調査で「環境移行への対応」の概念が明確になってきたので,精神障害者と知的障害者のグループホームについても,この概念を応用した調査を実施した.家族同居や施設からグループホームに移行した場合には生活の自律度は高まるが,社会参加度は変化が少ない.これは,現在のグループホームが地域社会との交流を図る配慮が少ないことに起因していると考えられる.
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