高齢心身障害者の自律度と社会参加度が、障害特性や居住環境構成の相違によってどのように変化するかをメインテーマに研究を進めた。研究内容は、7部で構成されている。第1部は、兵庫県南部地震における社会福祉施設と高齢集合住宅居住者の被災状況に関する研究である。施設には高齢者や障害者に対応した設備や人材が集中していたことから、地域拠点施設としての活躍がみられた。第2部は、まちづくりの視点からの居住環境構成を検討している。ニュータウンとオールドタウンと呼ばれる地域を対象に調査している。ニュータウンでは日当たりなどの物的環境に満足されていが、オールドタウンでは、長年の間に日常生活関連施設が整備され、利便性に満足されていた。第3部は、高齢者住宅の居住環境構成のあり方を追求し、居住者の日常生活における自律度と社会参加度を測定した。精神に障害をもつ高齢者の場合には社会参加度が非常に低下していた。第4部は、特別養護老人ホームが老朽化し、建替えられることになったので、これに伴う居住者の生活変容を検討した。検証手法としては、日常生活の自律度と社会参加度の測定と、生活行動の観察調査を用いた。建替えの影響は、自律度も社会参加度も高い歩行可能者のほうに多く現れ、自律度も社会参加度も低い痴呆性高齢者や寝たきり高齢者にはほとんど現れなかった。第5部は、知的障害者と精神障害者のグループホームにおける日常生活の自律度と社会参加度を測定した。グループホームに居住する心身障害者は、自律度は高いが、社会参加度は非常に低い。これは周りの地域住民からの理解や援助が得られ難いところに原因しており、これを取り除き易くする、人に優しいまちづくりの必要性が認められた。第6部は、精神障害者の社会復帰の実態を調査したものである。第7部は、これらを総合して、痴呆性高齢者や心身障害者たちが住みよい居住環境構成のあり方を考察したものである。
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