退院高齢者の住宅改善事例をもとに障害種類・程度を考慮した改善箇所の実態を解明し、福祉関係者に結果を戻しながら障害高齢者の住宅での対応環境を考究するため、まず初年度は、福祉関係者による住宅改善プラン作成の考え方を把握するとともに、退院高齢者の小規模な住宅改善67事例をもとに右・左片麻痺や下肢機能低下における改善箇所の要点、望ましい改善が行えなかった環境因子について検討し、以下のような結果が得られた。 1.退院高齢者の住宅改善指導では(1)排泄、入浴などの行為目的別の各動作手順に従って、本人のADLよりも介助者の状態や住宅の現状から可能か、改造すれば可能かという観点から改善内容が判断され、(2)手すりの長さや位置などは、実際に動作を行ってもらい本人の身長、姿勢、動作の癖などを考慮して取り付け可能な範囲で決められ、(3)在宅支援サービスなど介助方法を含めた最終的な改善プランが作成されていることが把握できた。 2.住宅改善の要点としては、例えば便所では、(1)立ち座り用手すりと据置様式便器の設置が基本で、立ち座り用には横手すりが多く、右・左片麻痺または前方に取り付けられ、(2)同じ障害種類で同程度でも手すりの種類や本数に違いがみられること、また浴室では、(3)主な改善内容は手すりと入浴台の設置などで、浴室出入り用手すりは片麻痺が入口の両側に、下肢機能低下が浴槽出入り用も含めて連続的な設置が望ましく、片麻痺は健側の足から入れるように入浴台が設置されるが、下肢機能低下には傾向がみられないこと、などが把握できた。 3.阻害環境因子としては、各部に共通して手すりの取り付け下地が、便所では和式便所の広さとドアの位置が指摘されるが、よくしつでは五右衛門風呂、カラン等の配管などのほかに、洗体と兼用される入浴台によって手すり位置が複雑になり、取り付け可能な場所に制約がみられること、など住宅の物的環境城家の課題が理解できた。
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