退院高齢者の住宅改善事例より障害種類・程度を考慮した改善箇所の実態を解明し、福祉関係者に結果を戻しながら障害高齢者の在宅環境を考究するため、昨年度の小規模改善プランの作成手法や改善の要点・阻害環境因子などの成果を発展させた。すなわち、昨年度の改善事例に対する追跡調査により小規模改善の有効性を検証するとともに、障害高齢者の居住環境システムの構築に必要な住宅ストックの危険・不安箇所の実態、住宅改善の公的助成制度の現状、福祉関係者と施工業者の連携における課題などを検討し、以下のような結果が得られた。1. 改善後4、5年が経過した時点で、(1)在宅は64例から35例(入院・入所17例、死亡11例)と半減し、発症から改善の期間が1年以内が圧倒的に多く、速やかな改善の重要性が指摘され、(2)在宅は改善箇所を使用した動作でADL低下がみられないが、施設入浴に変更など介助力の変化による影響がみられ、(3)ADLや改善の再評価から小規模改善は有効で、ADL履歴から介助力の違いが在宅の継続に与える影響が大きいことが検証できた。 2. 40歳以上を対象とした住宅ストック調査では、(1)寝室・便所の配置などに高齢期対応力がうかがえ、全体の4割が住宅内で危険や不安に感じ、(2)住宅内事故は、70歳以上で約3割、70歳未満で約2割が経験し、階段の踏み外しや浴室などでの滑りが多く、直階段や踏み面20cm未満・けあげ20cm以上が危険なこと、などが把握できた。 3. 広島県の公的住宅改善支援制度は、市町村によって貸付け、利子補給、給付の3通りがみられるが、その手続きの複雑さや条件が厳しく、予算額や申請から改造までの時間などが問題であり、リフォームへルパー制度の導入は2市町のみで、先進事例に比べて乏しい内容であること、また住宅改善を指導する側と工事をする側の意見を聞くと、前者は説明用の費用概算方法、後者は改善仕様・情報などの欠如といえることなどが理解できた。
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