障害高齢者の自立支援や介助負担の軽減をめざす住宅改善手法を考究するため、退院高齢者の住宅改善事例より障害種類・程度を考慮した改善箇所の実態を、福祉関係者に結果を戻しながら解明した。すなわち、初年度は福祉関係者の住宅改善プラン作成手法、退院高齢者の右・左片麻痺や下肢機能低下における改善箇所の要点、望ましい改善が行えなかった環境因子を明らかにした。次年度は、この成果を障害高齢者の居住環境システムの構築に発展させるため、追跡調査で小規模改善の有効性を検証し、住宅ストックの危険・不安箇所の実態、住宅改善の公的助成制度の現状、福祉関係者と施工業者の連携の課題などを検討し、主に次のような成果が得られた. 1. 住宅改善プランでは、(1)動作手順に従い本人のADLより介助者の状態や住宅の現状を考慮して改善内容が判断され、(2)手すりなどの設置は実際の動作を確認して取り付け可能な範囲で決められることなどがわかった。 2. 住宅改善の要点としては、例えば手すりの設置では、(1)便所の立ち座り用には横手すりが多く、右・左片麻痺は健側または前方に取り付けられ、同じ障害種類・要介助度でも手すりの種類や本数は異なり、(2)浴室出入り用は片麻痺が入口の両側に、下肢機能低下が浴槽出入り用と連続的な設置が望ましいことなどを明らかにした。 3. 手すりの取り付け下地、便所などの面積・形状・ドア位置、カラン等の配管などの改善阻害環境因子の影響を受け、取り付け可能な場所が制約され、手すりが兼用化されるなど、住宅の物的環境条件の課題を指摘した。 4. 改善後4、5年が経過した時点の追跡調査では、在宅者は半減しているが、ADLや改善の再評価から小規模改善手法は有効で、ADL履歴から介助力の違いが在宅の継続に与える影響が大きいことなどが検証できた。 以上のほか、住宅ストックの危険・不安箇所、住宅改善の公的助成制度や実施上の課題などを明らかにした。
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