高齢化社会の進行に伴い社会的あるいは行政による公的な支援や助成策が充実していく中にあっても、当の高齢者は依然として親子関係を軸とした肉親のサポートにより老後を送りたいとの要求がある一方、子供の側も、親と独立した生活を送りたいとの指向を持ちつつも、高齢の親の生活を何らかの形でサポートしたいとの要求も根強くみられる。本研究は、このようなゆれ動く親子関係のもとで展開される高齢者の住生活のサポート構造の様相と動向を探ることにより、今後の高齢者の住生活支援の方向を追究することを目的として、中国地方、四国地方、九州地方の全域の市町村を対象に、親子の居住生活関係の傾向を把握した。調査の結果、いずれの地域においても、従来の主流であった同居から、隣居あるいは近居など親世帯とある程度の距離を保ちつつも、火急の際にはすぐにかけつけることが可能な居住関係に移行する比率が高いことが確認された。さらに、中心都市から1時間圏あるいはそれを越える地域の出身子世帯においては、当該都市への通勤と高齢の親の介護や支援といった両者の利便性を考慮して、出身地と中心都市の中間地に居を構える準近居あるいは様子見圏居住といった新しい居住関係が増加する傾向があることを明らかにした。そのような居住形態は、中心都市の周辺において住宅地の開発が活発に行われている場合に特に促進されるが、このような子世帯自らの住生活を保持しつつも、一方で老親の世話のしやすさを考慮し、居住地を選択する傾向は今後ますます顕著になることが推察される。次年度においては、このような傾向が際立っている幾つかの地域において、現地調査を行い、さらにその実態を詳細に解明する予定である。
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