本年度は、昨年度に引き続き、戻り入居者における再建マンションの住環境調査を実施した。併せて最終年度として、復興上の問題点と復興に際して評価すべき点をまとめた。昨年度に引き続き、建替え・再建がなされた分譲マンションの中から、地域別、建替え・再建の事業手法別に16マンションを抽出し、アンケート調査により居住者の従前・従後の住宅評価を明らかにした。調査時期は、1999年10月から11月である。昨年行った神戸市・西宮市の調査結果は、従後マンションに不満の声が多く挙げられていた。これには、住民の意見が異なったまま再建されたこと、行政の対応の悪さなどが原因であろう。今年度の調査結果は、従前マンションより従後マンションの住宅設備、風通し、管理体制がかなり満足していた。復興までの計画に満足している人は、管理組合の合意形成がスムーズであり、復興計画や過程の管理・再建組合の総会の説明がわかりやすかった。復興までの計画に不満な人は、再建資金や再建に時間がかかり過ぎたとしている。 以上の結果から、被災マンション復興上の問題点を住民の合意形成の観点から明らかにした。 (1)建物被害の判定(構造主体に致命的損傷を受けた建物を除き、被害の状況により補修か建替えかを選択できる場合は、合意形成に時間がかかる)(2)住民の維持管理意識(日常的に復興に対して建設的でない住民が多い)(3)建物の形態(複合型、団地型、家族用と単身用住戸の混在のタイプは、利害が一致せず合意形成が困難である)(4)資金調達(二重ローンによる生活の圧迫が考えられる、再建する住戸の資産価値以上の債務があると再建が困難、高齢者はローンが組めないので資金調達が困難である)(5)法律上の問題(建築基準法や条例が建設当時より改正され、現状の建物規模に建替えられない場合があり、規模を縮小したものしか建たない)(6)専門家の不在(復興へ的確なアドバイスができるコンサルタントがなかった)(7)支援体制(震災直後は、自治体、管理会社、大規模設計施工会社、開発業者の対応が不適当で混乱があった)
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