地域型仮設住宅に居住する高齢被災者の生活実態とその評価 阪神・淡路大震災後、被災地に供給された地域型仮設住宅をとりあげ、その特徴と入居している高齢被災者の生活実態について調査・分析を行った。地域型仮設住宅には、阪神間で供給された、生活援助員が24時間体制で常駐しケアするタイプと神戸市で供給された日中のみ常駐しケアするタイプの二つの種類がある。阪神間の常駐ケアタイプは、芦屋市、西宮市、尼崎市、宝塚市の4市に合計13箇所、292戸が供給された。神戸市の巡回ケアタイプは、東灘区、灘区、中央区、兵庫区、長田区、須磨区の6区に合計21箇所、1500戸供給された。阪神間、神戸市の地域型仮設住宅に入居している高齢者の生活実態と課題について訪問聞き取り形式で調査を実施し、阪神間184件、神戸市159件の回答が得られた。阪神間、神戸市のどちらのタイプにおいても、入居している高齢者は、生活援助員がいて日常生活上の手助けや話し相手、相談にのってくれることを高く評価していることが明らかになった。さらに、各人の側室があり最低限のプライバシーが確保された上で、入居者同士が気軽に集まることのできる共用スペース(共用のキッチン、ダイニング、リビング等)が存在することが入居高齢者に評価されていることが明らかになった。 このような結果から、地域型仮設住宅は単に高齢被災者に対し緊急避難的な住まいの場を与えたという意義だけでなく、その物的な空間形態と運営システムにおいて、これまでわが国に例をみなかった高齢者住宅の新しいタイプを提案したという点でも意義があるといえる。今後、シルバーハウジング等におけるケアサービスや共用空間のつくり方に活かしていくことが考えられる。
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