阪神・淡路大震災で被災した高齢者の住宅復興の過程における、住まいとケアサービスの提供のあり方について研究を実施した。高齢者の住生活実態に関する調査をもとに分析、考察を行い以下の点が明らかになった。 高齢社会を迎えた都市部における大災害では、高齢の被災者を多数生みだし、被災直後の避難所から仮設住宅、復興住宅という過程において、高齢者に配慮した住宅復興対策が必要とされる。 今回の大震災においては、避難所での生活に堪えられない、支援を必要とする高齢者が多数いたことから、ケアサービスの不可された仮設住宅が供給された。ケア付き仮設住宅は、以下の二つの点で入居した高齢者から高く評価された。一つには、12戸前後の小グループを一つの単位として、ダイニングキッチン、居間、浴室を共用するとともに、トイレと洗面のついた6畳の個室を専有するという居住形態であること。もう一つには、生活援助員が24時間体制で常駐し、安否の確認、緊急時の連絡、日常におけるきめ細かな生活援助を行ったという点である。つまり、各個人のプライバシーの保てる居室を確保しつつ、居住者同士が交流できるスペースがあり、また24時間いつでも誰かが見守り必要に応じて生活を支えてくれるという安心感があるという点が評価されたといえる。 仮設住宅やケア付き仮設住宅に居住していた高齢者の多くが、復興公営住宅へと入居した。復興公営住宅に入居した高齢者は、病気や健康について不安を抱えているものが多い。特に、一人ぐらしの高齢者の多くは、病気で寝込んでしまった時の生活について不安を抱えている。また、入居している高齢者の生活サービスに対するニーズが高い。シルバーハウジングの高齢者は、LSA(生活援助員)が常駐していることに対して評価しているが、一般の復興公営住宅に居住する高齢者への対策が十分でない。生活サービスの今後の希望では特に食事・調理援助についてのニーズが高いが、これは現状のLSA業務を越えた内容であり、新たなサービス提供システムの必要性を示唆している。
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