本研究は、相互利用型ネットワークを形成する公共図書館の利用実態の特徴を明らかにし、蔵書規模計画における図書館相互のサービス分担の計画指針を求めること、及び、開架フロアーの平面構成を明らかにした上で、利用人数等の規模計画の設計指針を求めることを目的とした。 1. ネットワーク利用 1)ネットワーク内の図書館利用には3つの利用型があり、それぞれの利用型の特徴を明らかにした。特に、居住している自治体区域内の図書館と区域外のネットワーク図書館の両方に登録する利用型は、図書館の蔵書魅力からの利用が多く、サービス分担の指針を求めるためにはこの利用型に注目する必要がある。2)この利用型は、区域外のネットワーク図書館を本の蔵書魅力から利用し、区域内図書館は近さから利用するという使い分けがみられる。3)本の蔵書魅力は蔵書数であり特定の種別への偏りはないことから、図書館相互のサービスは本の種別分担ではなくそれぞれの種別の中での収集分担を基本とする計画指針を得た。 2. 子どもと親のファミリー利用からの平面構成 1)4つの利用型のうち、それぞれが離れて主目的利用をする分離利用型が優れており、平面構成の指針はこの利用型に求めるべきである。2)一般書コーナーと児童書コーナーを隣接させた配置構成は、児童書コーナーを拠点とした利用になりやすく分離の継続を保障しやすいことから、分離利用型に適した空間構成の型である。 3. 開架フロアーの規模計画 1)一般書コーナー、児童書コーナー、AVコーナー及び新聞・雑誌コーナーの1人当たり座席数の目安を得た。2)利用規模指標相互の高い相関関係から1日の貸出冊数をベースに一般書コーナー、児童書コーナー、AVコーナーの最大利用人数及び必要座席数の算定式を提示し、実際に配置された座席数の判定からその有効性を検証した。
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