本年度は、研究期間2年の前半として、得られたデータの整理に主眼をおいて作業を進めてきた。データ整理の中心となったのは、ハギア・ソフィア大聖堂南北テュンパヌムの写真測量図化および中央ドームを含む上部構造の等高線図のデジタル化である。 東側半ドームのデジタル・データからは、東西軸に直交する面によるドームの縦断面が円ではなく、頂部でやや尖り、両肩部でやや扁平になるいわゆる「おむすび」型であることが判明した。また、中央ドームのデジタル・データをもとに、各等高線の重心を算出して縦方向に連結したところ、施工精度に対応する揺らぎが視覚化され、特に、ドーム基部では施工と円形の制御が十分正確であったものの、頂部に向かうに従って中心軸からのずれが顕著になることが確認された。この3次元重心曲線については、平面投影、東西面への投影、南北面への投影が視覚化されている。 上記作業と並行して、ドームおよび大アーチを直接支持するピアの傾斜実測データの整理も進めた。この作業の結果、6世紀のピアが床面ではきわめて正確な正方形をなすように配置されていること、ギャラリーと第二コ-ニスでは高さの比1:1.7に対して1:4の変位比が認められること、約40年前になされたファン・ナイスの実測と比べると我々の実測の精度は高く、特に東西方向でより大きな変位が観測されたこと等が確認された。 研究期間の前半としては、おおむね順調に研究作業が進行し、研究目的に沿った成果が得られている。
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