本年度は研究期間3年の初年度にあたるため、基礎的な作業に重点をおいた。まず、三都の都市空間に関する既往の研究のデータ・ベース化に着手した。『史学雑誌』に掲載された文献目録から都市史関係の論文・著者を1970年以降、現在に至るまで入力した。本年度はそのうち1993年までが完成した。 つぎに、京都・大阪・東京の公共図書館・資料館を中心に、寺社地関係史料の所在調査を実施した。京都府立総合資料館、京都市歴史資料館、大阪府立中之島図書館、国立国会図書館、東京都立中央図書館などで、主要な寺社関係の史料所在の概要を掴むことができた。 本年度は、このなかで国会図書館所蔵旧幕府引継書のなかの寺社関係絵図を収集に着手した。浅草寺、護国寺、富岡八幡宮、増上寺、寛永寺の近世絵図をカラーポジで撮影することができた。京都では、京極寺町の諸寺院のうち、本能寺、誓願寺の史料収集を行った。大阪では、四天王寺関係の史料のリスト化を行った。 申請者はかつて近世都市における寺社地の類型として、(1)境内型、(2)寺町型、(3)町寺型の3類型を仮説として提示したことがあるが(「近世都市と寺院」、『日本の近世9』中央公論社、1993年所収)、江戸では(1)、京都では(2)、大阪では(3)のタイプが顕著であることが判明した。今後、さらに三都の寺社地における比較を深めていく予定である。
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