筆者が開発した居住空間構成法を用いて、幼稚園児に自分の好きな幼稚園を制作してもらう実験を行った。本年度は昨年度までの60人の幼稚園児に加えて、新たに10人の実験を追加した。さらに昨年度からはじめた描画や風景構成法との比較考察も行った。彼らの居住空間構成法作品の分析および描画や風景構成法との比較から、新たに以下のような知見が得られた。 1.描画の作品群は、なぐり描きや円を反復する「原初的」段階、円を組み合わせた人物画や四角・三角などの幾何学的図形を反復する「構成的萌芽」の段階、四角・三角などの幾何学的図形を組み合わせた組立画や三角屋根の家の様式、四角の中に要素を描く四角領域などが描かれ内外空間が区別される「構成化」の段階、地面を表す基底線や平面図的様式が描かれ要素間相互の関係付けがなされる「空間的統括」の段階の四つに大別することができた。これら描画の作品特徴は、居住空間構成法の空間構成に対応することが明らかとなった。居住空間構成法の空間構成と描画の特徴との比較により、それぞれの表現技法を越えたところで、両者に共通の図式を取り出すことができる。比較により、構造化前における囲う図式、同じものを繰り返し配置する図式、ものを自分に対面させて配置する図式、家具類の関係や幾何学的線の組合せによる描画など構造的関係性が萌芽する図式、内外空間を区別する図式、建物やその内部空間などを典型的記号で示す図式、空間全体を統括する図式を抽出した。 2.風景構成法との比較により、居住空間構成法で「囲い」が出てくる、あるいは描画で内外空間が区別されるようになると、風景要素間の関係が発生するという対応が判明した。
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