1.「イギリス新古典主義期の建築書におけるオーダー論の分析・検討」に関して (1)イギリス18世紀中頃まで活動した建築著述家W.ヘイプニ-の著作『当世建築業者の手引き』の分析によれば、イタリア・ルネサンスの建築書におけるオーダー理論が一般的には理念として捉えられ、実践における有効性は必ずしも明確ではなかった。 (2)しかしその著作に設計案を載せたR.モリスは、イタリア・ルネサンスの比例論を応用した設計方法を提示していた。 (3)モリスは、一方自著『建築備忘録』で、比例と意匠の構成手法において、より多様な展開を示していた。 (4)イギリスの建築書を中心にオーダーに関する記述のデータ・ベース化を図るため、取り扱う項目の検討を試みつつ90点について整理した。今後、イギリスから同時期のフランスなど、イギリスに影響を与えた建築書についても組み入れていく。 2.「同時代に関連する建築作品におけるオーダー表現の検討」に関して (1)イギリスを代表する建築家クリストファー・レンの教会堂におけるオーダー作法について検討を試み、意匠的・比例的な特徴について分析を試みた。 (2)意匠的にイタリア・ルネサンスとは異なる表現がすでに採られているだけでなく、比例ではオーダーの割り付けかたにとくに明瞭に示されるように、レンにもすでに新古典主義期の先駆となる志向がみいだされる。
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