松江藩の作事組織である御作事所に関する資料『御作事所御役人帳』は、御作事所の御大工や御役人の氏名、任用の年代、格式等を記したものであるが、今年度はこれら基礎資料の撮影(資料の撮影にカメラを購入)と整理、その翻刻と内容の検討が中心となった。『御作事所御役人帳』の存在は以前からわかっており、資料の複写ならびに検討も少しづつ進めていたが、具体的に翻刻作業を進めると、松江藩の格式や、武家屋敷の構成とも関わりがあることがわかりはじめ、『列士録』や『松平家文書』等の閲覧、複写が必要となった。(資料収集には旅費が伴った) 『御作事所御役人帳』の検討を進めることによって、この資料が寛永15年(1638)から享和2年(1802)までの御作事所に勤めていて御大工等の推移と動向を記したもので、江戸時代の作事組織の動向を伝える貴重な資料であることが次第に明らかになりつつあるが、『御作事所御役人帳』の検討作業は、科学研究費申請時から進めていたものであり、その一旦を「松江藩御作事所の構成とその推移」としてまとめていたが、このたび公表の運びとなった。 来年度は、収集した資料をコンピュータに取り込み、御大工等の推移を追跡し、その動態を分析する予定である。
|