松江藩の作事組織である御作事所に関する資料『御作事所御役人帳』は、御作事所の御大工や御役人の氏名、任用の年代、格式等を記したものであるが、前年度はこれら基礎資料の撮影と整理、その翻刻と内容の検討を中心に行ったが、今年度は、この資料全てを新規に購入したコンピュータに入力し、現在、御大工の一覧表を作成したりしながら御大工を中心に実態を明らかにしながらその動向について分析を進めながら、松江藩御作事所の全容を把握する作業を行っている。その一端は、1998年度日本建築学会中国支部研究報告発表会で「松江藩御作事所の人員構成について一松江藩御大工の研究 その3ー」と題して、報告する予定である。 松江藩御作事所は比叡山延暦寺の普請にも関与していたことが分かっているが、それらの実態を調査するために、叡山文庫等に行き資料調査を行った。 また、松江藩御作事所は松江周辺の神社仏閣の建造に関わっていることが、『御作事所御役人帳』によって明らかになったが、これの内、現存している建物(松江稲荷神社、愛宕神社等)の概況調査をおこなった。なお、この調査では実測等も必要であり、専門家の協力を求めて行った。 来年度は、コンピュータにより、収集した資料の分析作業をさらに前進させ、松江藩御作事所の全容を明らかにするよう努めるとともに、松江藩が関わった建造物の残存建物の実態調査をさらに進め、御大工等の動向と実態、また、松江藩御大工の技倆を明らかにしていきたい。
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