研究概要 |
本研究は課題名を「松江藩御大工とその作事について」と称しているが,本研究の目的は江戸時代における地方の作事組織の実態と組織形態の特色を明らかにするところにある。 基本資料として用いたのは『松江藩御作事所御役人帳』である。これによって、官営15年〜享和2年における松江藩の作事組織の動向を知ることができる。特に、御作事所の中でも中心的な存在である御大工の系譜とその働きを追跡することができる。なお、本研究による成果はおよそ次の通りである。 (1)御作事所が藩の施設を造営管理するのに重要な役所として位置付けられ、城内の建物、橋梁、社寺等の建築に関わっていたことが確認できた。 (2)御作事所には作業奉行、御大工、御役人、城普請から小夫など、多様な人材が配置されていたことが確認できた。 (3)その中でも中心的な存在は御大工であることを明らかにした。 (4)御作事所の主要な役職である御作事奉行、御大工、城普請等について役職と格式との関わりについて検証し、役職と格式が密接に対応していることが明らかになった。 (5)御作事所が関わった作事について確認し、松江藩御作事所の活動内容について概観した。 (6)御作事所に勤める御大工の全容を明らかにし、系譜としてまとめることができた。 (7)松江藩御大工の系譜をいくつか辿ることによって御作事所における御大工の位置付けとその推移が一層明確になった。 (8)『御作事所御役人帳』が地方における近世作事組織の実態を明らかにできる貴重な資料であることが確認できた。 (9)史料『御作事所御役人張』の翻刻を行った。 (10)以上の成果を研究成果報告書「松江藩御大工とその作事に関する研究」として上梓した。
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