研究概要 |
本年度はナノクリスタル材料の一方向変形および繰返し変形の機構を基礎的に研究するために,Severe Plastic Deformation法で作成された超微細結晶粒銅を用いて,ひずみ速度急変試験による変形の熱活性化過程の調査,および定塑性ひずみ振幅下,定荷重振幅下での疲労特性の調査をそれぞれ行った. 変形の熱活性化過程の調査では,試験片に種々の熱処理を施し,それらの材料の変形中の活性化体積を測定した.結晶粒の比較的大きな773K-2hr熱処理材および473k-10min熱処理材ではひずみの増加にともなう活性化体積の減少が観察された.これらのことは転位密度の増加によりセル構造が形成され,短範囲の障壁となることが原因であると考えられる.一方,結晶粒の比較的小さな非熱処理材では,ひずみの増加にともない活性化体積は逆に増加した.これらの結果は非平衡粒界の局所的な回復による林転位密度の減少から理解できる. 定塑性ひずみ振幅下(7.5×10^<-4>≦ε_<pl>≦5×10^<-3>)での疲労試験では,超微細結晶粒銅の応力振幅は250〜450MPa,バウシンガエネルギパラメータは0.5〜1.5であり,通常の銅に比べていずれの値も約2倍大きいことが判明した.定荷重振幅下(70MPa≦σ_a≦150MPa)での疲労試験では,金属材料に典型的な右下がりのS-N曲線が超微細結晶粒銅で得られた.材料の疲労限度を10^7サイクルとすると,疲労強度は約82MPaであった.超微細結晶粒銅は通常の銅多結晶と比べて同一荷重レベルでの疲労寿命が5倍以上長いことが判明した.疲労変形後の試料の透過型電子顕微鏡による観察では,室温での疲労変形による回復や再結晶が見られた.
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