研究概要 |
本研究課題では,室温において超塑性変形をしめす超微細結晶材料の疲労変形機構を明らかにすることを最終的な目標として,(1)単結晶材料,(2)Equal Channel Angular Extrusion(ECAE)加工された超微細結晶粒銅,および(3)EACE加工されたPb-62%SnとZn2-2%Al合金の繰返し応力-ひずみ応答を調査した. 銅,Fe-Cr,Fe-Cr-Niなどの単結晶や三重結晶を用いて結晶性材料の繰返し応答の基礎的な特徴を調査した.単結晶材料では特定の塑性ひずみ振幅域において固執すべり帯(PSB)が形成され,その形成にともなってバウシンガ効果が大きく変化することが明らかになった.また三重結晶を用いた研究では,結晶間の残留応力がバウシンガ効果の原因の一つであることを実験的に示した. ナノクリスタルの繰返し変形の基礎的側面を調査するために行った超微細結晶粒銅の繰返し変形試験では以下のようなことが明らかになった.ECAE加工された銅の応力振幅は250MPaにも到達し,バウシンガ効果も非常に高かった.しかしながら,微細結晶粒銅のそれらの特性は200℃程度の熱処理で劇的に変化した. ECAE加工されたPb-SnおよびZn-Al合金では,室温においても大きな伸びと流動応力の大きなひずみ速度依存性が一方向変形において観察された.繰返し変形試験では,初期段階から応力振幅は飽和状態に達した.Zn-Al合金では飽和応力振幅およびバウシンガ効果はひずみ速度が増加するにつれて増加した.一方,一方向変形おいて流動応力のひずみ速度依存性が特に大きかったPb-Sn合金では逆に応力振幅およびバウシンガ効果にひずみ速度依存性はほとんど見られず,一方向変形とは異なる傾向を示した.応力振幅およびバウシンガ効果の繰返し変形でみられたひずみ速度依存性は,Pb-Snでは超塑性変形に必要な熱活性化過程が作用しないこと,Zn-Alでは転位密度が増加することからそれぞれ理解することは可能であった.
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