研究の主目的は金属結晶粒界の電気抵抗の温度依存の調査であるが、金属中の結晶粒界による電気抵抗は非常に小さく、その中の温度依存分を取り出す為には、超高感度・高精度の測定が必要である。これには、従来の市販の測定システムでは不可能である為、次のように新たな測定システムを開発した。 1.抵抗測定は直流4端子法によるが、それに必要な電圧検出器として、感度10^<-13>Vの超伝導量子干渉計(SQUID)・電圧計を用いた(購入)。 2.通常、抵抗の精密測定では、まず、ある電流方向で試料電圧を測定し、次に電流の向きを反転させ、そこで、再び、測定した値との平均値をとることにより試料での熱起電力を消去する。しかし、SQUIDは電圧の急激な変化ひ追随出来ないので、電流値を徐々に滑らかに自動的に増減及び反転出来るSQUID用定電流装置を作製した。その際、試料に流す電流の値を大きくして抵抗測定の精度を上げるため、電流容量は2Aと大きくした。電圧安定度は4桁である。 3.SQUIDを用いる直流抵抗測定用温度可変クライオスタット(恒温槽)は市販されていない。SQUIDは磁気的雑音に動作を阻害されるが、超伝導体は磁気を通さないので、超伝導箔(鉛)を試料ケースに貼ることにより磁気シールドした。2.1K以下ではHeの超流動膜が壁を這いあがり、そこからの蒸発が激しくて温度が下がりにくいので、断熱2重管構造のうちの内槽(液体ヘリウム溜め)の途中を細管にし、超流動膜の這いあがりを防ぐ等の工夫をした極低温用SQUIDクライオスタットを作製した。 アルミニウム中の結晶粒界の電気抵抗の温度依存を測定する為、現在、1.2.3を組み合わせたシステムを調整中。
|