研究概要 |
抵抗比30,000の超高純度アルミニウム双結晶を歪み焼鈍法により作製し、単一結晶界面(結晶粒界・境界)の電気抵抗を超高感度電圧/抵抗測定器(超伝導量子干渉計:SQUID)で4.2Kで測定した。これは、不純物偏析のない本来の界面構造を反映した抵抗値を与える。界面構造を規定する界面の回転軸・回転角・界面方位等はx線回折で求めた。また、試料のサイズを遊動顕微鏡(本年度科研費で購入)で測定し、併せ室温の抵抗測定も行って、サイズファクターを得、これを用いて抵抗値を抵抗率に換算した。これらから、次のことを見出した。 1. 界面抵抗は界面のタイプに依存し、小角粒界・大角一般粒界・対応粒界・整合双晶境界の4つに分類できる。 2. 小角粒界は転位という線状の格子欠陥かつ刃状転位と螺旋転位の2種で構成されているとする転位モデルが確立している。その転位密度は、それぞれsin(θ/2)とsin(φ/2)に比例するところから、粒界の比抵抗ρ gbは次式で表されるとの予測される。θ;傾角、φ:ねじり角 ρ gb =Asin(θ/2)+Bsin(φ/2) 実験と比較すると小角粒界・大角一般粒界・対応粒界共この式が良く当てはまることが分かった。 3. 上の式のA,Bの小角粒界に対する値から得た小角粒界中転位の比抵抗は結晶中のそれと一致する。これは、粒界の電気抵抗は転位によって生じることを示している。 4. 粒界抵抗は回転角が22度と26度の間で遷移し、これは転位心が触れ合い始める角度と一致する。 5. 転位は、非常に乱れた半径数Åの転位心とμmに及ぶ長距離歪みから成るが、項3、4の事実は転位の抵抗が長距離歪みでなく、転位心から生じることを示している。 6. 項2の事実は、転位モデルが殆ど全ての粒界に当てはまることを示し、従来、転位モデルが小角粒界にしか適用できないとしてきた定説を覆すものである。 7. 双晶境界の抵抗は他より一桁小さく、整合双晶面である{111}面からのずれの角度に比例して大きくなる。これは、整合双晶に部分転位が重畳したものとして解析でき、他研究者の高分解能電子顕微鏡観察と一致する。
|