研究概要 |
MgO,Al_2O_3やMgO/nAl_2O_3スピネルなどの酸化物セラミックスの詳細な構造解析法を確立するために、本研究は入射電子の強い動力学的弾性散乱過程とX線放射を伴う非弾性散乱過程の相互作用についての理解を深めることを主たる目的としている。今年度は、昨年度にスピネル型化合物のカチオン配列決定法としてその有効性を確認した、電子線のチャンネリング励起X線分光と大角度収束電子回折による結晶構造因子の同時測定法を、1MeV電子もしくは300keV酸素イオンを1.5-2.Odpa照射したMgO/Al_2O_3,MgO/2.4Al_2O_3,MgO/3.0Al_2O_3スピネルに適用して、照射に伴うカチオンの変位について検討を行った。その結果、電子照射の場合は、照射前後においてカチオンの配列はほとんど変化しておらす、はじき出しが生じてもカチオンは即座に空格子点との再結合して、ほぼ元の格子点に戻るものと考えられる。一方、イオン照射ではMgイオンの配列は照射前後でほとんど変化が見られないのに対して、Alイオンは主に4面体サイトから8面体サイトに変位する傾向が見られた。また、空格子点が4面体位置により多く集まる傾向も観測された。恐らくイオン照射の場合は、局所的にはじき出しが集中して生ずるため、イオンや空格子点の再配列が電子照射に比べて生じやすいものと考えられる。今後、照射に伴うカチオンの変位についてさらに詳細な検討を行う予定にしている。
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