研究課題/領域番号 |
09650721
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松村 晶 九州大学, 工学研究科, 教授 (60150520)
|
研究分担者 |
安田 和弘 九州大学, 工学研究科, 助手 (80253491)
友清 芳ニ 九州大学, 工学研究科, 教授 (40037891)
|
キーワード | マグネシア・アルミネート・スピネル / 動力学的電子回折 / 結晶構造因子 / X線分光 / 電子チャンネリング効果 / 照射欠陥 |
研究概要 |
MgO,Al203やMgO/nAl203スピネルなどの酸化物セラミックスの詳細な構造解析法を確立するために、本研究は入射電子の強い動力学的弾性散乱過程とX線放射を伴う非弾性散乱過程の相互作用についての理解を深めることを主たる目的としている。今年度は、電子線の試料入射方位を細かく変えながら特性X線の強度を測定する手法(High Angular Resolution Electron ChannelingX-ray Spectroscopy:HARECXS)の有効性を実験と理論の両面から検討を行った。さらにこの手法を、1MeVNe+イオンの照射前後におけるMg0・Al203の陽イオンの配列の変化の解析に応用した。得られた結果を以下にまとめる。 (1)400系統反射列を励起した条件で、4gブラッグ条件から-4g条件まで電子ビームを傾けて得られるHARECXSプロフィールは、カチオンの配列に非常に敏感に依存して変化することが、実験とX線放出に関わる非弾性散乱を考慮した多波動力学的回折理論による計算から明らかとなった。さらにこのプロフィールは原子の静的変位にも依存しており、そこから原子の格子点からのずれについての情報も得ることが可能であることが示唆された。 (2)MgO-Al203について本手法を適用したところ、Ne+イオンの照射前では、Mgイオンの約60%が4面体位置を、A1イオンの約90%が8面体位置をそれぞれ占有していたのに対して、照射により陽イオンの変位が進み、構造が不規則化している様子がHARECXSプロフィールから明確に示された。プレ損傷ピーク位置では顕微鏡像や回折図形に照射による変化はほとんど見られず、本手法は高い感度での測定が可能である。損傷ピーク位置では、4面体位置にあるイオン総数が減少しており、そこで優先的に空孔が生成されていることが示唆された。
|