研究概要 |
等原子比近傍のTi-Ni合金は良好な形状記憶特性を発揮するばかりでなく、金属間化合物としては例外的に母相及びマルテンサイト相の両相において高い変形能を持つ.Gooら(Acta metall.,33,1725-1733(1985))は母相の変形が{114}B2複合双晶によって担われていることを報告している.一方、マルテンサイトの変形機構の詳細は明らかではない.そこで室温においてマルテンサイト状態にあるTi-50.0at%Niを引張変形し各段階における変形組織の透過電顕観察を行った. マルテンサイトの変形挙動は3つのステージに分かれ、40%に及ぶ破断伸びを示す.第Iステージでは〈011〉第II種双晶界面の移動とそれらより構成される自己調整したバリアント界面の移動が起こった。第IIステージではバリアント内に(100)複合双晶が形成され、変形量の増加とともに第IIIステージでは(001)、(20-1)複合双晶が発生した.(20-1)複合双晶のせん断変形量sは0.4250と非常に大きいことに加え、3種の複合双晶の形成によるすべり系の増加がマルテンサイトに良好な変形能を与えると考えられる.さらに、第IIIステージに対応する変形組織を加熱すると、(100)、(001)複合双晶は消滅し、(20-1)複合双晶に対応する界面のみが残留した.この界面は電子回折により(114)B2双晶面であることが判明した.加熱温度を調整し(20-1)複合双晶を残留させ高分解能観察を行ったところ、両双晶のK1面の連続性が認められた.このことより室温近傍のB2母相の良好な延性には応力誘起マルテンサイト変態が関与していることが示唆された.
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