研究概要 |
Alは希土類元素をほとんど固溶せず金属間化合物を容易に形成することから、本研究ではAl-希土類合金を取り上げ、先ずこの合金での金属間化合物が、電気抵抗にどのように寄与するかを調べた。試料作成はDCマグネトロンスパッタ法を用い、AlにSc、Tb、Ho、Er等の希土類元素(RE)を1-7at%含むAl-希土類合金薄膜を作成した。これらの合金を各温度で30分間等時焼鈍した後、電気抵抗と組織観察を行った。電気抵抗は4端子法で、組織観察はX線回折と透過電子顕微鏡を用いて行った。電気抵抗変化は作成したままでは約20-40μΩcmと非常に高い値を示すが、250℃以上の熱処理温度で、Al_3RE(RE=Sc,Tb,Ho,Er)金属間化合物が析出し始め、それとともに電気抵抗も急激に低下した。さらに350℃以上の熱処理では、5μΩcm以下の純Al薄膜の比抵抗に近い値が得られた。これらの金属間化合物は350℃の等温熱処理では、極めて短時間(5分以下)に析出することがわかった。これら薄膜の透過電子顕微鏡の試料を作成するため、ガラス基板上に被着させた薄膜を先ず機械研磨し、その後イオンミリングで試行錯誤の末、膜厚を約202nm以下まで薄くした。透過電子顕微鏡による組織観察から、Alマトリックス中に、多くのAl_3RE金属間化合物が、主に粒界に析出していることが分かった。熱処理後これらの合金系で純Alに近い低抵抗の薄膜が得られることは、主に金属間化合物析出によるAlマトリックス内からの不純物元素の排斥によると考えられる。またAl_3RE金属間化合物がAlマトリックス中に多く析出したにもかかわらず、Al薄膜と同程度の低い比抵抗(高い電気伝導度)が得られることから、これらのAl-希土類金属間化合物自体も低い電気抵抗を示すことが予想される。この事を証明するために、今後Al-希土類金属間化合物の電子構造を計算し、フェルミエネルギーでの電子密度を求めて、電気伝導度とどのような関係があるかを詳細に検討する予定である。
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