研究概要 |
本年度は供試材に常圧Si_3N_4焼結体(株式会社 東芝製 TSL-03)を使用し,引き裂き試験下にけるき裂進展挙動を光学顕微鏡を用いて動的観察を行うとともに引き裂き荷重とき裂開口変位の関係を求めた.また,き裂進展過程でき裂周辺に形成されるプロセスゾーン(PZ)及びプロセスゾーンウェイク(PZW)の微構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を透過型電子顕微鏡(TEM)によって追求し,解析・検討した. (1)小型試験片用引き裂き試験装置にクリップゲージを取り付け,き裂開口変位を高精度で測定できるように改良した.その結果,荷重-開口変位曲線にき裂進展の微視的挙動と関係づけられる変化が認められた.また,き裂進展抵抗値K_Rとき裂進展量との関係はき裂進展曲線が上昇型を示し,き裂進展過程が高靭化機構と密接に関係することを示唆する結果を得た. (2)き裂先端近傍の同一領域におけるき裂進展挙動を,き裂進展過程の異なる段階でSEM観察した結果,主き裂のき裂進展機構としてき裂先端前方のPZ内に粒界型微小き裂を形成しながらそれらと連結・合体を繰り返して成長する機構であることを実証できた.さらに,き裂間の連結・合体の過程で発現するブリッジング現象が,本材料の高靭化機構として有効に作用していることが明らかになった. (3)上記の引き裂き試験で,試験片長さの途中までき裂を進展させた試験片のプロセスゾーン(PZ)及びプロセスゾーンウェイク(PZW)からTEM観察用実物薄膜を作製して内部組織観察を行い,微構造解析を行った.その結果,き裂進展は粒界型を基本形態とし,進展経路にき裂偏向と柱状粒によるブリッジング形成の痕跡が認められた.き裂偏向の誘因となった結晶粒には,しばしば転位組織が観察された.
|