化学反応の持つ非線形性を利用して、高効率、高制御性の反応性スパッター法の開発および応用を目的とする。反応系は窒化チタンをステンレス等の基板上に堆積させる方法で、反応性スパッターに特有な反応性ガスによるゲット板への被毒効果を低減させ、かつ生成薄膜の組成制御も可能にすることを目指す。 具体的方法としては、反応ガス流量を制御して、反応ガス分圧に変調を加え、反応の非線形性による効果を期待した。反応性ガスによるターゲット板への被毒効果に対しては最大1〜2割程度の向上が見られた。この点の効果には、反応の圧次数が大きく寄与するため、取り扱う反応系の速度論的検討が急務である。逆に測定精度が上げられれば、この方法で速度論的研究も行いうる点が指摘された。そのためには、装置常数を抑える必要がある。我々の現状の装置では、この点の精度、装置常数の詰めが不十分である。具体的には反応ガス圧の矩形波的変化のディケイが大きく、マスフローコントローラーの動作条件をさらに詰める必要がある。 今回は流量に関しては、オン・オフの繰り返しとしたが、これによる深さ方向の組成の積層構造は、将来はこれを変化させることにより、連続可変な組成制御の可能性を示す。 反応性スパッターにはターゲット板への被毒効果が指摘されているが、これを減ずる結果を得た。すなわち、いわゆる金属モードと化合物(セラミックス)モードの現出割合を金属モード寄りにし、堆積速度の増加ならびに堆積膜組成の向上を同時に見た。
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