酸化六ホウ素(B_6O)は、ダイヤモンド、c-BNに次ぐ高硬度を有する硬質ホウ素化合物のひとつであり、切削工具やノズル材料への実用が期待されている。しかし、B_6Oは難焼結性であるために緻密な焼結体の作製が困難であり、その機械的・熱的性質はほとんど知られていない。本研究では、昨年度に引き続き易焼結性のB_6O合成粉末を超高圧焼結することによって高密度B_6O焼結体を作製し、その機械的・熱的性質を評価し、さらにB_6O基複合焼結体の工具材料への応用可能性を検討した。 1. B_6O焼結体の機械的・熱的性質の評価 B_6O合成粉末を、真空脱気処理後、ガードル型超高圧発生装置を用いて、圧力3-6GPa、処理温度1400-1800℃、処理時間15-30minの条件で高圧高温処理をおこなった。5GPa、1700℃、20minの高圧高温処理で得られたB_6O単相焼結体の相対密度は97%、ビッカース微小硬度は3400kg/mm^2に達した。B_6O焼結体の破壊様式は粒内破壊であり、その破壊靭性は低いので高靭化のためには他の硬質物質との複合化が必要である。また、焼結体の空気雰囲気中における熱分析(TG-DTA)により、B_6O焼結体はB_4C焼結体に比べて高温耐酸化性に優れ、初期の酸化生成物であるB_2O_3層が保護膜として機能し、約1000℃までは穏やかに酸化されることがわかった。 2. B_6O基複合焼結体の作製と工具材料への応用可能性の検討 B_6O焼結体の靭性を向上させるために、B_4CまたはcBNとの複合焼結体の作製を試みた。合成B_6O粉末に市販のB_4CまたはcBN粉末を湿式混合し、混合粉末を真空脱気後3-8 GPa、1500-1800℃、15-30minの条件で高圧高温処理をおこなった。その結果、B_6O-B_4C系およびB_6O-cBN系いずれの場合も、最高微小硬度は4600kg/mm^2に達し、破壊靭性値は1〜1.8MNm^<-3/2>まで改善された。以上の結果から、B_6O基複合焼結体は耐酸化性に優れた超硬質焼結体工具への応用を期待できることがわかった。
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